ターシャ・テューダー

私が初めてターシャ・テューダーの名前を心に留めたのは
日本では園芸ブーム真っ盛りの頃だったと思います。
書店での写真集に魅かれ、ターシャの自然の花園の美しさもさることながら、
彼女の美しくひたむきな年の重ね方に思わず
惹きつけられたのでした。

2005年夏、「私の庭へようこそ」のFishさんが、
掲示板に遊びにいらしてくれた事がきっかけで、
眠っていたわたしの記憶を呼び起こして下さいました。

その記憶とは、
某デパートの書籍売り場でターシャ・テューダーの写真集をそっと手に取った事。
でも、その時はターシャ・テューダーがこんなに大人気になるとは
想像もつきませんでした。
その写真集は第1刷が1997年に発行されておりましたが、
デパートの書籍売り場に行く機会があると、
ページを綴って眺めていたのです。

そして、2005年夏のハイビジョンでのあの放送後、
ターシャ旋風が日本中に巻き起こり、私も遅ればせながらようやく
「ターシャ・テューダーのガーデン」を注文いたしました。
他にも数多くの本が出版されていているようですが、
まずは私にとっての大切な最初の1冊です。

写真集を開いて、お気に入りの写真をデジカメで貼り付けて
ここに「ターシャ」のページを作ったのも、
Fishさんからのお言葉の後押しのおかげと思っています。

約30万坪の庭園・・・
と聞いただけで、どのくらいの広さか想像もつきませんが、
東京ドームの20倍というくらいなので、とてつもなく広いのでしょう。
アメリカ北東部バーモント州の寒さ厳しい、その広大な敷地にターシャは暮らしています。
「ターシャ・テューダーのガーデン」では、
ターシャの庭の様子が、冬から4月までの春への前奏曲から始まり、
5月・6月・7月・8月・9月の収穫のとき・その後まで、
季節の移り変わりと共に綴られています。
そして、草花をこよなく愛するターシャの姿が写真集
に収まっています。

スミレ・シャクヤク・スイトピーなどへのターシャの思い出・
バラはオールドローズ・タチアオイは一重咲き・パンジーは薄紫色に限る・・という
植物へのこだわりのエピソードが、とても楽しく感じられます。
何を隠そう・・と書くまでもありませんが、
実は私もタチアオイは一重咲き・パンジーとアネモネは紫色に限る・・と思っている
一人であります。

アンドリュー・ワイエスの絵のよう・・
まっ白い雪の中で、真っ赤なマントが、まるで
赤いバラの花びらのようにも思える絵になる1枚の写真です。

落ち葉の間から春が顔だして

 豊かな自然の中でコーギン(コーギーの複数形だそうです)
や鶏・猫・山羊など小動物と心を通 わせ、
アーリーアメリカンの生活様式を愉しみ、絵本を書くターシャ。
 自ら設計し、息子セスが手工具で建築したという18世紀の農家風の住まい。
ラベンダー・サーモンピンク・レモンイエローの花々で彩 られた美しいガーデン。



  ターシャは一日の大半を草花の手入れに費やし、庭の果実を摘み、
小花模様のドレスやエプロンを手作りし、山羊の乳を搾り、
ジャムやジェリー(透明ジャム)を作り、ブルーベリーパイを焼く。
菜園には料理の材料だけではなく、キンセンカ・ケシ・デイジーなどの
花も野菜とともに愛でているのです。
エンドウ豆は花も美しいので、野菜の中でも
特に大事にしているそうです。

シンプルでぬくもりに満ちた、慎ましやかなターシャの暮らしぶりは、
この上なく豊かなものなのだと思います。
彼女が日々の生活に感謝し、毎日変わることのない愛情で
植物や動物や移ろう季節を大切にし、
心から楽しんでいることが、写真集から
伝わってくるのです。

収穫されたブルーベリー

ターシャの庭では、
デイジー(フランスギク?)の群落の間から
雑草も顔を出しています。
クラブアップルのそばのケマンソウの株はとてもみごとで、
雑草の忘れな草やたんぽぽも、、
仲良く咲いているのです。
ターシャの庭から、昔からある植物への愛着・
優しさを感じます。

私の好きな写真は、白バラとクレマチス。
6月のナデシコの「妖精の輪」。
ふんわりと幾重にも開いたシャクヤクの花。
一面にルピナスの花咲く草地。
女の子のレースのアンティークドレス。
ターシャの装い。
微妙な色合いのチューリップ。
などなど・・・。

ターシャは毎年チューリップの球根を
100個〜200個注文するのだそうです。

微妙な色合いのチューリップ

ぎっしりと密に植えられたチューリップの花を見て、
私もたくさんのチューリップを植えることにしたのも、ターシャから
教わった事なのです。
それまでは、蕾を次々に咲かせる花ではない事と、ここでは球根を毎年増やす事ができないという理由で
チューリップの球根をあまり多く買うことはなかったのです。
・・・といっても、100個や200個を購入するという恐れ多い事はなかなかできなくて
私が植えるのは多くてもせいぜい30球くらいなのです。

一面ルピナスの花

私はまだターシャの絵本を読んだ事がありませんが、
写真集に添えられた挿絵は何と優しい色使いなのでしょうか。
というのも、ターシャはチューリップ・バラ・パンジー・プリムラ・シャクヤクなど、
いずれも派手な色合いよりも、ほんのり柔らかな色調の花を好み、
育てているからなのです。

*楽しみは創り出せるものよ

*幸せとは、心の持ち方の事よ

*思うとおりに歩めばいいのよ

*今が一番いい時よ

*絵本を描くのは、球根や、お花を買うためよ

*何かを始めなければ、何も起こらない

*時間をかけてするということは、それだけ愛情を注ぐこと

*庭仕事は体が疲れても心が満たされる

*楽しいことはそれを待つ喜びも嬉しいのよ、春は必ずやってくるのだから

*人生は短いのよ、好きな事をしなくちゃ

*草原に咲くデイジー、満天の星・・・他に何もいらないわ

*今が人生で一番幸せよ

ターシャの心温まる言葉の数々は、私に勇気を与えてくれます。

  


このページの写真は「ターシャ・テューダーのガーデン」
トーヴァ・マーティン著・リチャード・W・ブラウン写真・相原真利子訳(文芸春秋)より
デジカメで写して貼り付けましたが、光(腕)の関係で見えにくいところはお許しください。

 ターシャ・テューダーの庭を開放し、
始めて映像化して、
1年に渡るロケのもと、
ターシャが丹精こめて咲かせた花々や、
多彩なライフスタイルが、
2005年8月31日20:00からハイビジョンで、
9月11日9:30からBSUで、
放送されました。

四季の庭の
様子をTVにくぎづけになって見ました。
ルピナスの花と野の花に囲まれた小道を
私も一緒に歩みながら、コーギーコテージから入り、
ターシャの庭を私も一緒に散策
してきたような気持ちです。

ターシャは3歳の時に、グラハム・ベルの庭の
黄色いバラ(ロサ・ユーゴニス)を見た時から、花の魅力に目覚めたそうです。
グラハム・ベルがポケットに入れたルピナスの種を
行く先々に撒いたため、アメリカ中にルピナスの花が
いっぱいになったというお話が大好きだそうです。
堅苦しいガーデンが好きではないという、
ターシャの庭では、みんなが雑草と呼ぶ草花も
たくさん植えてあるのです。

何もない荒涼とした荒地(かつてのじゃがいも畑)を
デイジーとルドベキアや野の花で埋め尽くしたターシャ。
肩にかけた種の袋から種をばら撒く様子を聞いて、
情景が浮かんできます、私も一度
やってみたいな・・。

草原に咲くデイジーの花(野の花)は、満天の星と同じ、
他に何もいらないわ。
心に響くターシャの言葉にいちいち感心したり、
四季の庭はもちろんの事、
草花を、生き物を、それぞれの季節を
こよなく愛するターシャの生き方を
とても美しいと感じました。


【ターシャ・テューダー】

挿絵画家・絵本画家・園芸家
1915年8月28日、
マサチューセッツ州ボストンに生まれる。
1938年に「パンプキン・ムーンシャイン」を
出版して以来、80冊以上の本を出版。
19世紀のライフスタイル・
ガーデンの美しさは有名。
4児の母。


2008年6月18日
自宅で家族、友人に囲まれて逝去。
92歳没


ターシャ・テューダーのホームページ
http://www.tashatudorandfamily.com




ここから先は余談ですが、
私の明治生まれの亡き祖母・大正生まれの義母・
昭和一桁生まれの母の暮らしぶり
をほんの少し紹介いたします。

毎朝、神仏へのご挨拶を始めとし、
お正月・お彼岸・お盆・祭典・大晦日など、
季節の節目をとても大切にしています。

仏様はもちろんの事、
井戸神様・屋敷神様・恵比寿様(海の神様)・大黒様(農業の神様)・・・
暮れの年越し蕎麦をお供えするのも一仕事です。
毎月1日と15日には庭の榊をお供えします。

11月20日と1月20日は恵比寿講、
のっぺい汁と尾頭付きの魚を対で
お供えします。

お彼岸・お盆の前には必ず2度のお墓の掃除・
ひな祭りにはちらし寿司を作り、雛あられと桜もちを供え、
端午の節句には、柏餅としょうぶ湯。
暮れにはお供えのお餅を始めとして、
親戚に配るお餅もせっせと作ります。
大晦日には庭の神様にも御蕎麦を供え、
お正月には鏡餅。
おせち料理(ここ何年かは少しですが)
から七草粥まで。
毎年毎年めぐる季節の決まりごとです。

物をとても大切にし、庭の草花も昔から
植えられているシオン・キク・ジンジャーなど大事に
育てています。
高齢になっても、広大な庭の草引きも行い、
雑草でもニワゼキショウやネジバナはそっと
残しておくのです。

庭で採れた梅は、いくつものビンに梅酒をつけて、
野菜も無駄にせずに、切り干し大根・煮豆・
お漬物など、保存食をせっせと作ります。

一見頑な(頑固)とも思えるそのこだわりは、
人生を長く生き抜いて来たことへの
自信の現れ、長い間に余計な物は端折って、
大切な物が残されたのだとも思うのです。

このページに添えたのは、
季節の移り変わりや昔からの生活に愛着を持ち、
代々伝わる家や親族を大切に守り、何事にもひたむきに、
昔ながらの事にこだわりを持って生活している姿を、
ターシャと重ね合わせて見たからです。

ターシャのような
すばらしい庭を作りだしたわけではありません。
皆が皆、ゆったりとした時間の中での
自然と向き合った田舎暮らしが
出来るわけではありません。
   それでも、 自分の手で何か楽しみを創り出し、
1日1日を大切に生きてゆく事ができれば・・・
と私も思います。


・・・・・2009年・・・・・
ターシャの生き方や、自然な庭の様子を溜息をつきながら夢見て早4年、そして、私もほんの少し年を重ねました。
その間、私は日本にもたくさんの ターシャ予備軍の方達や、ターシャような方がいらっしゃる事を知りました。
海や田や畑からの贈り物や労働に日々感謝し、1日1日を丁寧に
生きている私の周りにいらっしゃる方々、
その行いや考え方には身を正さずにはいられません。
若輩者の私にはとても勉強になることばかりです。

生前の(ターシャ)の生き方やガーデンに感銘を受け影響を受けて、
こうありたいと憧れる夢をもてた事は、とてもありがたい事だと思っています。
                                    続く・・・

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